銅イオンの効果効能

2019 12/16
  • スケール・サビ・スライム・藻類と銅イオンの効用

スケール 【銅イオンとスケールの関係】

循環冷却水の中には、補給水から入り込むカルシウムが陽イオンとして存在します。
冷却塔の稼動により水が蒸発し濃縮が進むと飽和濃度が上限値を超えて析出が始まります。特にカルシウムイオンは二酸化炭素と反応し炭酸カルシウムとして、沈殿製の高い溶解度の低い物質となります。

また、炭酸カルシウムは温度が高くなるほど溶解し難くなり、配管・装置に付着し金属と比較して大幅に熱伝導率を低下させる原因となっています。
スケールが配管・装置に強固に付着するのは微生物の影響があるともされています。また、カルシウムイオンは塩化カルシウムにも変化します。

シリカスケールも発生します。酸化カルシウムが媒体として付着物となりますが、アルカリ水質内では物性上温度関係にも影響されますが溶解度が高く水中に浮遊しています。

いずれにせよ伝導率には大きな影響を与える障害物ですので、対応が必要となります。

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陽イオン H+ Ca2+、Na-、Ng+、K+ SiO2 溶存ガス O2 N2 CO2
陰イオン H+ Ca2+、Na-、Ng+、K+

銅イオンの作用

炭酸カルシウムに対する銅イオンの作用には、初期段階では2種類あると考えられます。一つは剥離現象です。付着状況を観察すると、鉄管の場合(配管材料は各種あり)以下の3つの作用が同時に進みます。

  1. 付着接点の炭酸カルシウムとの作用
  2. 接着に関与している微生物等と作用
  3. 鉄管そのものと作用

この3つの作用により、非常に小さな剥離破片となり循環水中に浮遊します。
その後は、次に述べる溶解作用で順次浄化されていきます。元来、炭酸カルシウムは非常に結合性が強固な物性がり、銅イオンとの遭遇による急激な変化は無く、やや遅効性で溶解〜分解していきます。
つまり、スケール全体に銅イオンが作用しカルシウムイオンとなり水中に浮遊していきます。

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一般的な工場のスケール除去には1〜2ヶ月間(銅イオン濃度0.3ppm程度)の判断基準を得ております。

スケール除去後

スケールが剥離・溶解した後、水中には銅イオンの作用による鉄イオンなどが浮遊しています。また、補給水からも絶えず不純物が送り込まれます。
濃縮倍率の上昇を抑える為に、排水処理(ブロー処理)が必要となります。
その後は銅イオンの作用によりスケールの発生しない環境が維持できます。

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循環冷却水系では主として2種類の錆が検討の対象となります。
赤錆(Fe2O3)黒錆(Fe3O4)の二つです。
ここで問題なのは赤錆で、配管内に腐蝕は不均等の状態で進み錆コブが形成され更に腐蝕進行します。黒錆の場合は配管内にシート状に完全に出来上れば防錆皮膜となります。赤錆コブの下部が酸素接触の減少から黒錆に変化すると言われていますが、現実では防錆皮膜には至らないと考えられます。また、配管内を人為的に黒錆皮膜化する方法もあります。
錆コブを除去しますと、腐蝕が均等化されていない為配管の肉厚内部は凸凹状態となっています。(肉減り)これは錆コブの下部で酸化促進する塩化物イオン Cl- や硫酸イオン SO42- の濃縮のためです。

銅イオンの作用

赤錆に銅イオンが作用すると、鉄部分は鉄イオンとなり錆は溶解します。
銅イオンは単体金属となり化成皮膜を形成し配管内を保護する役目をもっています。
その為循環冷却水に送り込まれる銅イオンと共に錆の再発を抑制します。
鉄イオンはそのままの状態または沈殿物となり、スケールと同様に処理されます。 イオン化傾向 Fe > Cu Cu2+ + Fe = Fe2+ + Cu(不水溶性) Fe2+ + 2OH ⇒ Fe(OH)2 4Fe(OH)2 + O2 + 2H2O ⇒ 4Fe(OH)3

スライム

スライムはゼラチン状をした生物と非生物の混合物であり、水中においては機器の表面などに形成されるものです。スライムを形成するのは微生物であり、細菌・黴・酵母などで、その種類は数千種類ともいわれています。特に細菌は全てのスライムで認められますが、それぞれの環境によってスライムの主な要素が事なります。

細菌などが循環冷却水の中に分散している場合は問題ありませんが、スライム化すると熱交換効率を低下させ、局部腐蝕の原因となります。形成する殺菌の種類は、ズーグレア細菌、鉄バクテリア、藻菌類(水カビ)が主なものと推測されます。

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スライムは太陽光、温度、酸素量が発生成長の条件でありますが、まさに冷却塔はその条件を満たす環境といえます。また、要因となる微生物は空中に浮遊しており、常時冷却塔より吸収しているといった悪条件下にあります。

銅イオンの殺菌効果はレジオネラ菌や大腸菌などで証明されているように、スライムを形成している微生物にも効果があります。
しかし、寄生済の繁殖速度は非常に早く、外部から更に要因が入り込む状況であると、銅イオンの作用が追いつかずイタチゴッコとなることがあります。
特に夏季にはその状況が顕著に現れることがあります。この様な場合でも、銅イオンの抑制効果は現れております。
常時、雑菌を殺菌している事は事実で、更なる大量の発生を抑制しています。この場合の対策は、銅イオンの放流方法の変更や、イオン量の調整で対応することが可能であります。

スライムの効果目視判定

スライムが死滅すると、乾燥状態ではわかり易い枯死状態となります。枯死せずにゼラチン状で残存している場合(殺菌はされている)は、判断が非常に難しいものとなりす。

本来なら新設或いは殆どの要因を除去した状況で稼動を行なうのが望ましいのですが、既設施設への導入の場合でも、銅イオン量の調節により十分に対応できます。

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スライムの効果目視判定

  • ズーグレア細菌
  • イオウ細菌
  • 糸状細菌
  • 不完全菌(アオカビ)
  • 鉄バクテリア
  • 藻類(水カビ)
  • 硝酸塩還元菌

藻類

冷却塔に関係するものは主として、藍藻類、緑藻類、珪藻類の3種類です。光のある場所に発生し光エネルギーで炭酸同化作用を行い、冷却塔やピット内に繁殖します。特に藍藻類は細菌に近い下等微生物であり、この種類の発生が多いようです。

基本的には銅イオンが細胞内に入り込み栄養源をエネルギーに返還する作用を阻害し死滅させるものです。(銅イオンと酵素の結合)

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緑藻類は高濃度の銅イオンが必要ですが、藍藻類と珪藻類は0.2ppm前後で死滅するといわれています。しかし、どの藻類にせよ、繰り返し繁殖する能力があるので、多少の時間は要す事となります。